小児科診療の歴史
小児科の診療内容は、国や時代の変化と共に大きく変わります。第二次世界大戦後、栄養失調のこどもが多かった頃は、こどもが健康になるためにはとにかくたくさん栄養を与える事が重要とされてきましたので、栄養学が主なテーマでした。
その後は、こどもにとって常に身近でもあり、健康を脅かすこともある、急性の感染症が大きな相手です。その中でも細菌感染症のなかには命に関わるものもありましたが、抗菌薬の使用が広がったこと、平成になってからは予防接種政策も欧米に近づいてきたことで、残念ながら命を落とす子やいわゆる「風邪がこじれて入院になる子」は、かなり減少したと思います。
また、第一線で活躍される多くの小児科の先生方は、慢性疾患・難病・稀少疾患や医療ケアを要するこども達の治療とご家族の支援に奮闘し、こども達が持病を持っていても無事おとなになることを目標に身を粉にして頑張ってきました。このことで、多くの疾患に対して新たな治療法が生まれ、生命予後も改善しました。
こうして、生きるか死ぬかだった時代から、生きているのが当たり前の世の中に変化し、ようやく、人知れず苦しんでいるこども達が少なくない事が着目されるようになってきました。その中でも重要なテーマが神経発達症(発達障害)であり、心身症であり、さらには不登校児、引きこもり児、そして被虐待児です。また、他の先進国の小児科では、薬物中毒や肥満対策が大きな課題になっています。
国立成育医療研究センターの現理事長である五十嵐隆先生は、これからの小児科は「Biopsychosocial(身体的・心理的・社会的)にこどもを捉え、支援する医療」が必要と述べられています。令和の時代の小児科は、地域に生まれたこども達が、心身共に健康におとなになるために、継続的に総合的に、お子さまとご家族の支援をしていくためにあるのだと思います。
当クリニックの小児科診療のコンセプト
- このような時代の変化のなかで、地域にとって必要な小児科診療、まさに「Biopsychosocialにこどもを捉え、支援する医療」を目指します。
- 核家族、ご両親共働きのご家庭が多い都会で、多くの不安の中で子育てをするご家族さまは少なからずいらっしゃると思います。地域で育つお子さまが健やかな心身発達をとげ成人になるまで、お子さまご自身とご家族の継続的な支援を行います。
- お子さまが健康に育っていくための乳幼児健診や予防接種は、小児科診療の基本ですので重点的に取り組んで参ります。
- 感染症診療も小児科が長く取り組んできました。当クリニックでも、受診歴の有無に関わらず、小児に特有のウイルス感染症、細菌感染症や新型コロナウイルス感染症を疑う症状のある患者さまに対応した診療を行います。そのために必要な感染防止対策として、一般診療の時間帯に発熱など感染症の症状が疑われるお子さま専用の個室待合室(2室)と診察室で診療を行うことで、空間的・時間的分離により発熱患者さまとその他の患者さまの動線を分ける体制を有しています。
- 都会には、専門分野に特化した医療機関が多く存在しますが、訴えを認めるお子さまの病態は心身の状態が複雑に絡み合っている事が多いので、1つの専門分野では解決しません。当クリニックは、お互いに絡み合う身体的・心理的・社会的要因を切り離すことなく総合的に診療に取り組んで参ります。
- その一環として、夜尿症や、起立性調節障害などの心身症、思春期特有の症状、神経発達症(発達障害)、登校に困難を抱える児の対応を行います。