小児予防接種について
赤ちゃんの生まれてきた体には、お母さまからもらった様々な免疫(IgG抗体)が流れていますが、その免疫力は時間の経過と共に弱くなり、やがて生命にも影響しかねない感染症にもかかりやすくなってしまいます。このような状態から身を守るためのおくすりがワクチンです。ある病原体を弱めたり無毒化して体内に接種することで、その感染症に対して免疫がつきます。18世紀にその方法が見つかり、以降改良が重ねられ、種類も増え、新型コロナワクチンのように新しい方法も開発されています。
かつては、特定の感染症に対し、多くのこどもが感染し命にかかわったり後遺症を残したりしました。戦後日本でも数種のワクチンが導入され、例えばポリオや麻しん(はしか)、風しんの大流行が起こることはなくなりました。しかし、そのことで人々の免疫が維持されにくくなり、現在でも海外からウイルスが流入し、国内での流行のきっかけとなることが分かっています。東京ではここ数年、麻しんや風しんの感染者数増加を繰り返しています。そのため、現在も予防接種が重要であることに変わりなく、その考え方から、日本で接種できるワクチンの種類もようやく欧米並みに増えてきました。
定期接種と任意接種
お子さまが受けられる予防接種は、その種類・接種回数も様々ですが、大きく「定期接種」と「任意接種」の2つに分類されます。
定期接種は、自己負担無く公費で接種出来るよう国が定めたワクチン接種です。その多くは、国が接種する事をお勧めしています(勧奨接種)。定期接種に指定されているワクチンは、その予防効果がより高くなるように接種の時期を定めています。その期間内に接種をすれば無料です。なお、接種期間を過ぎてしまっても接種をすること自体は(ロタウイルスワクチン以外は)可能ですが、この場合は全額自己負担になりますのでご注意ください。
任意接種は、国が定めた定期接種以外の予防接種となります。しかしこの中には、海外では定期接種扱いとなっているワクチンもあり、日本小児科学会や、NPO法人「VPDを知って、子どもを守ろうの会」で接種を推奨しているワクチンもあります。費用は原則全額自己負担となりますが、北区では、おたふくかぜワクチンのように一部公費負担としているワクチンもあります。
小児が受ける定期接種と任意接種は以下の通りです。
小児の定期予防接種の種類と回数および推奨年齢
- 5種混合ワクチン(DPT-IPV-Hib:ジフテリア・百日せき・破傷風・ポリオ・ヒブ)【不活化ワクチン】:計4回
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- 生後2~4か月の間に3回
- 1歳になったら(最短3回目終了後6か月以降)1回
- ヒブワクチン【不活化ワクチン】:計4回
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- 生後2~4か月の間に3回
- 1歳になったら1回
- 小児用肺炎球菌ワクチン(15価)【不活化ワクチン】:計4回
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- 生後2~4か月の間に3回
- 1歳になったら1回
- ロタウイルスワクチン(1価もしくは5価)【生ワクチン】:1価(当クリニックで採用)は計2回
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- 生後2か月に1回目(生後6週から接種可能で14週までに開始)
- 生後3か月(1回目から4週間後)に2回目(1価ワクチンは生後24週目までに完了する)
- B型肝炎ワクチン【不活化ワクチン】:計3回
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- 生後2~3か月の間に2回
- 生後7~8か月に1回
- 4種混合ワクチン(DPT-IPV:ジフテリア・百日せき・破傷風・ポリオ)【不活化ワクチン】:計4回
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- 生後2か月から3回(2023年4月より、生後2か月から接種できるようになりました。)
- 3回終了後1年たったら1回
- 2種混合ワクチン(DT:ジフテリア・破傷風)【不活化ワクチン】:1回
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- 11歳のときに1回
- 麻しん(はしか)・風しん混合ワクチン(MR)【生ワクチン】:計2回
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- 1歳になったら1回
- 小学校就学前の1 年間に1回
- 水痘(水ぼうそう)ワクチン【生ワクチン】:計2回
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- 1歳になったら1回
- 1回目から6か月たったら1回
- 日本脳炎ワクチン【不活化ワクチン】:計4回
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- 流行地域でなければ3歳になったら2回
- 4歳になったら1回
- 9歳のときに1回
- BCGワクチン【生ワクチン】:1回
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- 生後5~7か月の間に1回
- 子宮頸がんワクチン(HPV)【不活化ワクチン】:計3回
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- 女子が対象で、標準接種期間は中学1年生の時に3回
令和6年4月から公費での5種混合ワクチン接種が始まります。このワクチンは、これまでの4種混合ワクチンとヒブワクチンが1つになったものです。
令和6年4月から肺炎球菌ワクチンは13価から15価に変更となります。
小児の任意接種の種類と回数
- おたふくかぜワクチン【生ワクチン】:計2回
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- 1歳になったら1回
- 小学校就学前の1 年間に1回
- インフルエンザワクチン【不活化ワクチン】:計2回(13歳以上は1回)
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- 生後6ヵ月以降の全年齢が対象で、毎年流行前の9~12月に接種
- 1回目から2~4週間後に2回目
- A型肝炎ワクチン【不活化ワクチン】:計3回
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- A型肝炎に感染するリスクの高い国に渡航する場合、1歳から接種可能
- 2~4週間の間隔で2回
- 1回目から24週後に1回
- 髄膜炎菌ワクチン【不活化ワクチン】:1回
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- 海外で寮に入るなど集団生活をする場合
- 2~55歳で接種可能
- 狂犬病ワクチン【不活化ワクチン】:計3回
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- 狂犬病リスクの高い国に渡航する場合
小児の予防接種(定期接種、任意接種)の詳細は、下記予防接種スケジュールをご覧ください。